保険 見直しのやり方|制度改正から逆算する5手順【2026年版】
固定費節約の教科書 / 記事

保険 見直しのやり方|制度改正から逆算する5手順【2026年版】

/

「保険 見直しのやり方」を一言でいうと、公的保障(高額療養費・傷病手当金・遺族年金)で埋まる部分を先に確定させ、残った差額だけを民間保険で買い直す作業です。商品比較から始めると、公的保障の変更を織り込まないまま保障を買い足すことになります。

そして2026年から2028年にかけて、その公的保障そのものが動きます。2026年8月の高額療養費の上限引き上げ、2028年4月の遺族厚生年金の5年有期給付化、2026〜2027年分の生命保険料控除の6万円特例——この3つのカレンダーを自分の数字に当てはめてから、はじめて商品を見る。これが本記事の手順です。

本記事は保険会社・代理店ではない立場から、無料相談窓口の収益構造や、家計インパクトが大きいのに生保の記事では扱われない損保(自動車保険の参考純率が2026年6月に平均+14.4%)まで含めて、見直しの「順番」を示します。

ポイント

見直しの目的は「安くすること」ではなく「公的保障との差額に合わせること」です。結果として下がることはありますが、条件・年齢・健康状態によっては上がることもあります。本記事は節約効果を断定しません。

結論:保険 見直しのやり方は「制度→公的保障→差額→商品」の5手順

保険 見直しのやり方の結論は、①制度改正カレンダーの確認②公的保障の実額算出③必要保障額の差額計算④順番を決めて着手⑤新契約成立後に旧契約を処理の5手順です。所要時間は書類集めを含めて3〜6時間が目安です。

多くの解説が「現状把握→商品比較」で組まれていますが、本記事は手順①に制度確認を置きます。理由は単純で、医療保険の必要額の土台である高額療養費の上限が2026年8月に変わり、死亡保障の土台である遺族厚生年金が2028年4月に変わるためです。土台が動く前提で計算しないと、直したそばから前提がずれます。

手順やること所要時間の目安この手順がないとどうなるか
① 制度確認2026年8月・2028年4月・控除特例を自分に当てはめる30分古い公的保障額で必要額を計算してしまう
② 公的保障の算出高額療養費・傷病手当金・遺族年金の実額を出す60分民間保険で買い過ぎる
③ 差額の計算必要額−公的保障−貯蓄=民間で買う額60分保障額の絶対値で提案を受けてしまう
④ 着手順の決定告知不要・削減額が大きいものから30分健康告知が要る生保から触って身動きが取れなくなる
⑤ 契約処理新契約成立→旧契約を減額/解約30〜60分無保険期間・引受謝絶のリスク

手順④が独立している点が、一般的な5ステップ解説との最大の違いです。告知が必要な保険(医療・死亡)から手をつけると、健康状態を理由に新契約に入れず、かといって旧契約も解約できないという膠着に陥ります。告知不要な損害保険・共済から着手するのが実務上の原則です。

まとめ

順番の核心は2つ。「制度と公的保障を先に確定してから商品を見る」ことと、「告知不要なものから着手する」ことです。

保険の見直しとは:解約以外に5つの選択肢がある

保険の見直しとは:解約以外に5つの選択肢がある

保険の見直しとは、加入中の契約の保障内容・保険料・受取人を現状に合わせて点検し、過不足を調整する作業を指します。解約と新規加入だけでなく、減額・特約解約・払済保険・延長保険・契約転換という契約を続けたままの手段を含みます。

手段内容保険料主な向き先
減額保障額を下げる(契約は継続)下がる子の独立後の過大な死亡保障
特約解約使わない特約だけ外す下がる重複した入院特約など
払済保険以後の払込を止め、保障額を縮小して継続0になる予定利率が高い古い契約を維持したい
延長(定期)保険保障額は維持し、期間を短縮0になる一定期間だけ保障を残したい
契約転換現契約の積立を新契約に充当(同一社限定)変動慎重な検討が必要

生命保険文化センター(2026年)によると、契約転換は現契約の責任準備金・積立配当金を「転換価格」として同一保険会社の新契約に充当する制度で、転換時の予定利率が元契約より下がる場合は保険料が引き上げとなります。同センターは、転換以外に現契約を継続したまま保障を見直す方法(追加契約・特約の中途付加等)の説明が募集時に必要とされる点も明記しています。転換を勧められたら、この代替案の説明を受けたかを必ず確認してください。

補足

「見直し=安くする」ではありません。生命保険文化センターの2025年度調査では、死亡保障の必要額1,569万円に対し加入金額は887万円、医療保障は必要額 日額10,100円に対し加入金額 日額8,500円と、平均では不足側にギャップがあります。削る方向だけが正解ではありません。

【手順①】保険 見直しのタイミングは「制度が動く年」で決まる

保険 見直しのタイミングは、ライフイベント(結婚・出産・住宅購入・子の独立)に加えて、公的保障の制度改正が施行される年です。2026〜2028年は、医療・死亡の両方の土台が動く珍しい時期にあたります。

2026年8月:高額療養費の自己負担限度額が上がる

厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」(2025年12月25日)によると、高額療養費制度は令和8年(2026年)8月診療分から見直されます。年収約370万〜770万円の区分ウでは、月額上限が 80,100円+(医療費−267,000円)×1% から 85,800円+1% へ引き上げられます(差 +5,700円/月)。引き上げ幅は全所得区分で約4〜38%、低所得区分ほど上昇率が小さく設計されています。

同時に、8月〜翌年7月で通算する「年間上限」が新設され、年収約370万〜770万円の層では年53万円が上限となります(超過分は保険者から還付)。多数回該当の金額は維持され、2027年8月からは年収200万円未満の課税世帯の多数回該当額が引き下げられます。

この見直しは2025年春にいったん凍結・見送りとなりましたが、2025年5月設置の専門委員会で計8回の議論を経て2025年12月にとりまとめられ、2026年度政府予算が2026年4月7日に成立したことで2026年8月実施が確定しました。第2段階として2027年8月に所得区分が5区分から13区分に細分化され、さらに月額上限が引き上げられます。

医療保険の必要額を語るすべての前提が、この日付で変わります。「入院1回あたり自己負担いくら」を古い上限で計算した試算は、2026年8月以降は過小評価になります。

2028年4月:遺族厚生年金が原則5年の有期給付になる

年金制度改正法(2025年成立)により、2028年4月から遺族厚生年金が原則5年間の有期給付に見直されます。5年間は有期給付加算が上乗せされ現行額の約1.3倍に増額される一方、受給要件だった「遺族の年収850万円未満」という収入要件は撤廃されます。5年経過後も、障害年金受給権者や就労収入が月約10万円以下の人は継続給付を受けられます。新たに対象となるのは子のいない60歳未満の男性が推計約1万6,000人とされています。

子のいない共働き世帯ほど、死亡保障の必要額が構造的に増える方向の改正です。「ライフステージで見直す」という一般論では拾えない変化なので、該当する人は手順③の再計算が必須です。

2026〜2027年分:生命保険料控除の「6万円特例」

令和7年度税制改正により、生命保険料控除の6万円特例が令和8年(2026年)分に加えて令和9年(2027年)分まで延長されました。その年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額が所得税で4万円→6万円になります。3区分(一般・介護医療・個人年金)合計の上限12万円と住民税側は据え置きです。国税庁タックスアンサーNo.1140では、23歳未満の扶養親族が2以上の居住者の扶養親族に該当する場合(共働き夫婦で子がいるケース)、いずれの居住者も対象となる取扱いが示されています。

解約は控除額の減少を伴います。年末調整に間に合わせるなら、判断は11月の証明書提出前に済ませるのが実務上の区切りです。

制度施行影響する保険見直しでやること
高額療養費 上限引き上げ・年間上限新設2026年8月医療保険・がん保険自己負担の上限を新しい額で再計算
高額療養費 13区分化2027年8月医療保険自分の所得区分の再確認
遺族厚生年金 5年有期化2028年4月死亡保険遺族の受取総額を2パターンで比較
生命保険料控除 6万円特例2026・2027年分生命保険全般解約時の手取り減を織り込む

ライフイベント時の観点(一般的な確認事項)

ライフイベント見直しの観点
結婚配偶者への死亡保障、受取人の変更
出産教育資金、世帯主の保障増額
住宅購入団体信用生命保険と死亡保障の重複
子の独立過大になった死亡保障の縮小
転職・退職収入変化、社会保険(傷病手当金の有無)の切り替え

住宅ローンを組むと団体信用生命保険(団信)でローン残債分の死亡保障が備わるため、この分を差し引かないと保障が二重になります。自営業・フリーランスへの転職では傷病手当金がなくなるため、逆に就業不能への備えを厚くする判断があり得ます。

まとめ

タイミングは「ライフイベント」+「制度改正年」の二軸です。2026〜2028年は後者が重なるため、イベントがなくても一度計算し直す価値があります。

【手順②③】制度改正を織り込んだ必要保障額 再計算シート

必要保障額は、公表されている数値だけで計算できます。「人それぞれ」で止めず、以下のシートに自分の数字を入れてください。

A:医療保障の再計算(2026年8月版)

項目計算式記入例(医療費総額100万円・入院15日・会社員)
1想定入院月の医療費総額100万円(3割負担なら窓口30万円)
2高額療養費 現行上限(区分ウ)80,100+(総医療費−267,000)×1%87,430円
32026年8月以降の上限85,800+(総医療費−267,000)×1%93,130円(差 +5,700円)
4保険外の実費1日あたり実費×入院日数24,300円×15日=364,500円
5傷病手当金(会社員のみ)標準報酬月額÷30×2/3×休業日数月30万円なら 6,667円×日数
6必要な一時金(行3+行4)−行5−医療用の預貯金上記から自分の貯蓄を差し引く

行4の「1日あたり24,300円」は、生命保険文化センター「入院費用(自己負担額)はどれくらい?」(2025年度 生活保障に関する調査)による、直近の入院時の自己負担費用の1日あたり平均です。総額平均は18.7万円で、これは高額療養費制度利用後の金額であり、治療費・食事代・差額ベッド代のほか交通費・日用品費を含みます。

入院日数の想定には、厚生労働省「令和5年 患者調査」の平均在院日数28.4日が使えます。ただし傷病別のばらつきが極めて大きく、心疾患18.3日に対し統合失調症等は569.5日です。平均値だけで長期リスクを判断しないでください。

行5がゼロになる人(自営業・フリーランス・無職)は、この行がそのまま必要額の上乗せになります。協会けんぽによると傷病手当金は1日あたり「支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均÷30×2/3」、支給期間は支給開始日から通算して1年6か月(復職期間は通算から除外され、残日数を再度受給可能)です。国民健康保険には原則この給付がありません。

判定の目安:生命保険文化センターの2025年度調査では、医療保障の必要額は日額10,100円・一時金24.0万円に対し、実際の加入金額は日額8,500円・一時金19.4万円です。行6の結果が加入中の給付額を上回るなら上乗せを、大きく下回るなら減額・特約解約を検討する材料になります。

B:死亡保障の再計算(2028年4月の有期給付化を織り込む)

遺族基礎年金(令和8年度) = 年847,300円 + 子の加算 各243,800円(1・2人目) → 子1人なら年1,091,100円(末子18歳到達年度末まで)

遺族厚生年金の概算 = ねんきん定期便の老齢厚生年金額 × 0.75(報酬比例部分の4分の3)

比較項目パターン①現行パターン②2028年4月以降
遺族厚生年金の期間要件を満たす限り継続原則5年(要件該当者は継続給付)
5年間の水準現行額有期給付加算で約1.3倍
収入要件年収850万円未満撤廃
受取総額(末子18歳まで積み上げ)遺族基礎+遺族厚生×年数遺族基礎+遺族厚生×1.3×5年

②−①の差額が、2028年以降に自前で用意すべき額の目安です。子がいない・共働きで遺族基礎年金の対象外という世帯は、②の減少幅が最も大きくなります。逆に、これまで年収850万円以上で受給できなかった人は、要件撤廃で受け取れるようになる分だけ必要額が減ります。

参考までに、生命保険文化センターの2025年度調査では死亡保障の必要額 平均1,569万円に対し加入金額は887万円(差 682万円)です。

C:解約したときの税効果(手取りへの影響)

年間払込保険料の平均は17.1万円(生命保険文化センター 2025年度調査/月換算 約14,250円)です。この水準だと一般枠の控除限度に触れる人が多く、解約は保険料の削減と控除の減少が同時に起きます。

  • 23歳未満の扶養親族がいる → 令和8・9年分は一般枠の上限が所得税6万円
  • 3区分合計の上限12万円・住民税は据え置き
  • 控除額 × 所得税率(+住民税10%)が、ざっくりの手取り差

所得税率は課税所得で決まるため、年収400万円と800万円では同じ控除額でも手取りへの効き方が変わります。「月々◯円安くなる」と「年末調整で戻る額が減る」を同じ表に並べて比較してください。

注意

上記はいずれも公表値にもとづく概算です。実際の給付額・控除額は加入状況、所得区分、家族構成で変わります。確定的な金額は日本年金機構・国税庁・加入中の健康保険組合の一次情報でご確認ください。

【手順④】見直しの順番=家計インパクト順マトリクス

着手順は、「告知が不要で削減額が大きいもの」からです。生命保険から始めるのは、健康状態を人質に取られる順番なので推奨しません。

対象保険直近の料率・制度の動き動く年間金額の目安作業時間健康告知先送りリスク
自動車保険参考純率 2026年6月23日届出 平均+14.4%(機構発足以降最大)数千〜数万円60分不要更新月を逃すと1年固定
火災保険2023年6月 参考純率 +13.0%(各社2024年10月反映)数千〜数万円60分不要長期契約の途中では動きにくい
共済への一部置換2025年3月決算 総合保障2型 割戻率 全国平均35.36%掛金差分60分加入時に告知あり
医療保険2026年8月 高額療養費上限+5,700円・年間上限53万円新設数千〜数万円90分必要健康状態の悪化で選択肢が減る
死亡保険2025年4月 標準生命表改定/2028年4月 遺族年金5年有期化数万円90分必要同上・年齢上昇で保険料増
貯蓄性保険・個人年金予定利率は1980年代の5〜6%から2017年度0.25%へ低下不可逆慎重に不要解約は元に戻せない

①②を先に置く理由は3つあります。第一に、告知が不要なので健康状態に関係なく実行できること。第二に、損害保険料率算出機構が2026年6月23日に自動車保険の参考純率を平均+14.4%引き上げると金融庁に届け出ており(2002年の同機構発足以降で過去最大、前回2024年6月改定は+5.7%)、放置すると更新時に負担が増えること。修理工賃・部品価格の高騰が背景で、損保ジャパンは2026年7月に平均1.8%、東京海上日動は10月に平均6.5%引き上げる方針と報じられています。第三に、火災保険も2023年6月に参考純率が全国平均+13.0%引き上げられ、各社が2024年10月に反映済みです。

③の共済は、都道府県民共済グループの2025年3月決算にもとづく割戻率が総合保障2型で全国平均35.36%でした。割戻金は前年4月〜当年3月の払込掛金に割戻率を乗じて算出され、例年8月上旬に支払われます(割戻率は都道府県の組合ごとに異なります)。単純計算では実質負担が掛金の約64.6%になりますが、保障内容・年齢による保障の減少・共済の種類によって民間保険と単純比較できない点は必ず確認してください。

⑤の死亡保険については、2025年4月に日本アクチュアリー会の「標準生命表」が約10年ぶりに改定され、死亡率の改善を反映して多くの保険会社が保険料を改定しました。定期保険・収入保障保険など死亡保障系の保険料が下がり、保障内容も充実する方向に動いています。同じ保障を古い契約のまま持ち続けている人ほど、乗り換えの余地が生じていることになります(ただし年齢上昇分は上乗せされるため、必ず現契約と見積もりを並べて比較してください)。

ポイント

損保→共済→生保の順に進めれば、告知でつまずいても損保の削減分は確保できます。逆順だと、生保で足踏みしている間に損保の更新月が過ぎます。

【手順⑤】解約ボタンを押す前の5分岐チャート

解約は不可逆です。押す前に、以下の4つの質問に順番に答えてください。

Q1:その契約に解約返戻金はあるか

保険証券の「解約返戻金」欄を見てください。

  • 0円(掛け捨て) → Q3へ(減額/特約解約/乗り換えの3ルート)
  • 金額の記載あり(貯蓄性) → Q2へ

Q2:契約日はいつか

契約時期予定利率の水準判断
1992年以前5〜6%(いわゆるお宝契約)解約・転換とも原則NG。保険料が払えないなら『払済保険』へ(保障額は下がるが以後の払込は不要、予定利率は維持される)
1993〜2016年段階的に低下Q3へ
2017年以降0.25%水準Q3へ

生命保険の予定利率は1980年代〜1992年頃の5〜6%をピークに低下し、2017年度には0.25%まで引き下げられました。古い貯蓄性契約ほど、今の商品では再現できない条件を持っています。

Q3:今の健康状態で新規加入の告知が通るか

直近2年の入院・手術・投薬の有無を確認してください。

  • 通らない見込み → 解約せず、減額・特約解約のみで対応(新契約に入れないまま旧契約を失うのが最悪の結果)
  • 通る見込み → 2025年4月の標準生命表改定後の商品と保険料を比較して乗り換えを検討

Q4:転換を勧められている場合の必須確認3項目

同一保険会社での転換を提案されたら、以下を書面で確認してください。

  1. 転換後の予定利率は元契約より下がらないか(下がる場合は保険料が上がる)
  2. 転換価格がいくら新契約の保険料に充当されるか
  3. 転換以外の代替案(追加契約・特約の中途付加)の説明を受けたか

3は生命保険文化センターが、募集時に説明が必要とされる事項として明記している内容です。提示がなければ求めてください。

そして最後に:新契約成立後に旧契約を処理する

この順番だけは例外がありません。新しい保険の保障開始日を書面で確認してから、旧契約の減額・解約手続きに入ります。先に解約すると、その間に入院や万一があっても両方から給付を受けられない無保険期間が生まれます。また、新契約が引受謝絶になった場合、旧契約はもう戻りません。

注意

告知は正確に行ってください。健康状態や通院歴を伝えずに加入すると、告知義務違反として保険金が支払われない可能性があります。「告知すると入れないかも」と隠すのは、保障そのものが機能しなくなるため逆効果です。

保険 見直しの注意点:無料相談に行く前の自衛チェックリスト7問

見直しの注意点として見落とされがちなのが、「無料相談」がなぜ無料なのかという収益構造です。多くの窓口は相談者からではなく、保険会社からの代理店手数料で成り立っています。

金融庁は保険会社向けの総合的な監督指針の一部改正(案)(2025年5月公表)で、乗合代理店において保険会社間の代理店手数料の割増引率に差があると、割増引率が高い保険会社の提案に偏る傾向があり、既存シェアの高い保険会社が優位となって商品・サービスの多様性が失われるおそれがあると指摘しました。「保険代理店等に対する過度な便宜供与の防止」等が改正項目に挙げられています。

これは相談窓口を否定するものではありません。構造を知ったうえで質問すれば、提案の偏りを検証できるという話です。以下を相談前に印刷するかメモしてください。

  • [ ] ① 収益源の確認 — 「こちらの相談料は無料ですが、御社の収益は保険会社からの代理店手数料でしょうか?」
  • [ ] ② 手数料差の有無 — 「提案いただく商品ごとに、御社が受け取る手数料の水準に差はありますか?」(金融庁が2025年に割増引率の差を課題視した点を踏まえた質問です)
  • [ ] ③ 比較の範囲 — 「取扱保険会社の全社名と、今回比較検討した社数、除外した会社とその理由を教えてください」
  • [ ] ④ 転換の代替案 — (転換提案時)「転換後の予定利率と、転換以外の方法=追加契約・特約の中途付加についても説明をお願いします」
  • [ ] ⑤ 提案の土台 — 「この保障額は、高額療養費・傷病手当金・遺族年金を差し引いた不足額として算出されていますか?それとも保障額の絶対値ですか?」
  • [ ] ⑥ 解約の順番 — 「新契約の成立前に、旧契約の解約書類へのサインを求められていませんか?」(求められたら断ってください)
  • [ ] ⑦ 書面の交付 — 「意向把握の記録と、比較推奨理由書の書面交付をお願いします」

⑤は特に効きます。生命保険文化センターの2025年度調査では対面で保険に加入したい人が60.6%(うち営業職員経由希望35.6%)と依然多数派ですが、対面提案が「必要額の絶対値」で組まれているか「公的保障を引いた差額」で組まれているかは、最終的な保険料に直結します。

そのほかの主な注意点

つまずき何が起きるか対処法
保障の重複同じリスクに二重で払う団信・勤務先の付加給付を棚卸し
先に解約無保険期間・引受謝絶リスク新契約成立後に解約(例外なし)
告知ミス告知義務違反で不払いの恐れ事実を正確に申告
条件をそろえず比較安さだけで保障が薄くなる保障内容・期間・払込期間をそろえる
返戻金の見落とし解約で元本割れ解約返戻金額を事前確認
控除の見落とし手取りが想定より減る6万円特例の対象かを確認

貯蓄性の保険(終身保険・学資保険など)は、加入から年数が浅いと払い込んだ額より戻る額が少ない「元本割れ」になることが一般的です。また、ネットのランキングは作成者の基準や広告の影響を受けている場合があるため、手順③で出した自分の差額という物差しで判断してください。

注意

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の商品の推奨や個別の助言ではありません。最適解は契約内容・健康状態・家計状況によって異なります。重要な判断の前に、保険会社や独立系ファイナンシャル・プランナー等の専門家にご相談ください。

ケース別:3つの世帯での判断の分かれ方

ここでは一人暮らし・子育て世帯・子の独立後の3ケースで、制度改正がどう効くかを示します。考え方の例であり、最適解は個別の状況で変わります。

ケース1:20代・一人暮らし(扶養者なし・会社員)

扶養する家族がいないため、大きな死亡保障の必要性は低いと考えられます。葬儀費用程度の少額の死亡保障と、公的保障で足りない分の医療保障に絞るのが基本形です。

  • 効く制度:2026年8月の高額療養費引き上げ(+5,700円/月)。ただし絶対額としては小さい
  • 確認ポイント:勤務先の傷病手当金・健保組合の付加給付。付加給付があれば医療保険はさらに薄くできる
  • フリーランスの場合:傷病手当金がないため、シート行5がゼロ。就業不能への備えの優先度が上がる
  • 着手順:自動車保険・火災(借家人賠償を含む)→ 共済比較 → 医療保険

ケース2:30代・子育て世帯(子1人・住宅ローンあり・共働き)

死亡保障が最重要ですが、団信でローン残債はカバーされるため、その分を差し引いて計算します。教育費のピークまでを期間とする掛け捨ての定期保険や収入保障保険が選択肢になりやすいとされています。

  • 効く制度:2028年4月の遺族厚生年金5年有期化。共働きで子がいる世帯は、遺族基礎年金は受け取れるが遺族厚生年金の期間が縮むため、シートBの②−①の差額を必ず計算する
  • 税の論点:23歳未満の扶養親族がいれば令和8・9年分は一般枠が所得税6万円。共働きで子がいる場合、いずれの居住者も対象となる取扱いが示されています
  • 確認ポイント:団信の保障額、配偶者側の死亡保障(片働き前提で組んでいないか)

ケース3:50代・子の独立後

大きな死亡保障の役割は小さくなり、縮小した分を老後資金や自分の医療・介護に振り向ける局面です。生命保険文化センターの2025年度調査では、老後の最低日常生活費は月23.9万円、ゆとりある老後生活費は月39.1万円とされています。

  • 効く制度:2026年8月・2027年8月の高額療養費見直し(年齢的に使う可能性が上がる時期に上限が上がる)
  • 最大の注意:古い貯蓄性保険。1992年以前の契約はQ2で「原則解約NG」に該当する可能性が高い
  • 着手順:まず減額・特約解約で保険料を下げ、貯蓄性契約には手をつけない
まとめ

独身は縮小、子育て期は制度改正で必要額が増える方向、子の独立後は再び縮小。ただし2028年の遺族年金改正は、子育て期・子なし共働き層に逆風として効きます。

よくある質問

Q. 保険の見直しはどのタイミングでやるべきですか? A. ライフイベント(結婚・出産・住宅購入・子の独立・転職)の前後に加え、公的制度が変わる年が目安です。2026年8月に高額療養費の上限引き上げと年間上限の新設、2027年8月に所得区分の13区分化、2028年4月に遺族厚生年金の5年有期給付化が控えているため、この期間はイベントがなくても一度計算し直す価値があります。年1回の定期点検を誕生月などに固定するのも有効です。

Q. 保険の見直しで注意することは何ですか? A. 最大の注意点は順番です。①新契約が成立してから旧契約を解約する(無保険期間と引受謝絶を避ける)、②告知が不要な損害保険から着手する(健康状態でつまずいても削減を確保できる)、③1992年以前の予定利率5〜6%の貯蓄性契約は解約・転換とも原則見送る、の3つです。加えて、解約すると生命保険料控除が減り手取りが変わる点も計算に入れてください。

Q. 生命保険の見直し方法として、解約以外にどんな選択肢がありますか? A. 減額(保障額を下げる)、特約解約(不要な特約だけ外す)、払済保険(以後の払込を止め保障額を縮小して継続/予定利率は維持)、延長保険(保障額は維持し期間を短縮)、契約転換(同一社の新契約に積立を充当)の5つです。予定利率の高い古い契約を持っている場合、保険料負担が重いなら解約ではなく払済への変更が選択肢になります。

Q. 無料の保険相談にデメリットはありますか? A. 相談料は無料でも、多くの窓口は保険会社からの代理店手数料で成り立っています。金融庁は2025年5月公表の監督指針改正(案)で、保険会社間の代理店手数料の割増引率に差があると割増引率が高い保険会社の提案に偏る傾向があると指摘しました。デメリットというより、提案が中立とは限らない構造を理解して使うことが重要です。本記事のチェックリスト7問(取扱全社名、比較した社数と除外理由、手数料差の有無、公的保障を引いた差額での提案かなど)を質問すれば、偏りをある程度検証できます。

Q. 医療保険は必要ですか?高額療養費があれば不要では? A. 一概には言えませんが、判断材料は具体的に出せます。高額療養費があっても、生命保険文化センターの2025年度調査では直近の入院時の自己負担は総額平均18.7万円・1日あたり平均24,300円(高額療養費利用後の金額で、差額ベッド代・食事代・交通費等を含む)です。さらに2026年8月から区分ウの月額上限が+5,700円になります。会社員は傷病手当金(標準報酬月額÷30×2/3、通算1年6か月)がありますが、自営業・フリーランスは原則ありません。この差額を預貯金で払えるなら医療保険の優先度は下がり、払えないなら必要という順で判断してください。

Q. 見直すと保険料は本当に安くなりますか? A. 断定はできません。重複保障の整理や掛け捨て中心への切り替えで下がることがある一方、年齢上昇や保障の追加で上がることもあります。また2026年6月に自動車保険の参考純率が平均+14.4%引き上げられるなど、料率自体が上昇している分野もあります。「安くする」ではなく「公的保障との差額に合わせる」を目的にしてください。

Q. 古い保険は解約して新しいものに入り直すべきですか? A. 1992年以前の予定利率5〜6%の貯蓄性保険は、維持した方が有利な場合が多いとされています。一方、死亡保障については2025年4月に標準生命表が約10年ぶりに改定され、定期保険・収入保障保険などの保険料が下がる方向に動いたため、古い掛け捨て契約は乗り換え余地があります。貯蓄性は維持寄り、掛け捨ての死亡保障は比較する価値あり、と分けて考えてください。

Q. 健康に不安があっても見直せますか? A. 見直し自体は可能です。ただし新規加入には告知が必要で、加入できなかったり保険料が割増になったりします。この場合は乗り換えではなく、減額・特約解約という契約を続けたままの手段に絞るのが安全です。また、告知不要な自動車保険・火災保険の見直しは健康状態に関係なく実行できるため、そちらから着手してください。

---

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の勧誘や個別の契約判断を保証するものではありません。制度・料率・商品内容は変更される場合があります。契約前に、厚生労働省・日本年金機構・国税庁・金融庁・各保険会社の最新の一次情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。記載の制度改正は2026年8月1日時点で公表されている内容にもとづきます。

主な出典

  • 厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」(令和7年12月25日)
  • 公益財団法人 生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」
  • 厚生労働省「令和5年 患者調査」
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)傷病手当金
  • 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
  • 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」一部改正(案)(2025年5月)
  • 損害保険料率算出機構 火災保険・自動車保険 参考純率
  • 国税庁 タックスアンサー No.1140 生命保険料控除

最終確認日:2026年8月1日

関連記事