「ガス会社の切り替えは安くなると聞くけれど、デメリットが不安で踏み切れない」——その不安、実は2024年7月と2025年4月の法改正で中身が入れ替わっています。ネット上に残る「解約時に高額な違約金」「無償貸与の設備費が請求される」といった説明の多くは、改正前の一般論のままです。
結論からお伝えすると、いまあなたに残っているデメリットは、次の3つの分岐で機械的に絞り込めます。
- 都市ガスか、LPガス(プロパンガス)か
- 持ち家か、賃貸か
- その契約を結んだのは2025年4月2日より前か、後か
この3分岐を通すと、6つあるデメリットのうち自分に該当するのは通常1〜2つだけです。本記事では、毎月の支出を下げたい一人暮らし・ファミリー・家計管理を始めたばかりの方に向けて、①残っているデメリットを特定するチャート、②3ケース別の対照表(工事・立ち会い・解約金・元に戻す費用)、③違約金の回収月数シミュレータ、④契約書(14条書面)のチェックリストを用意しました。読み終えたときに「自分は切り替えるべきか、今は見送るべきか」を自分で判断できる状態になることをゴールにしています。
本記事は制度の概要を整理したものです。金額・手続きは契約内容と地域で大きく異なります。個別の判断は契約中のガス販売事業者、公的機関の一次情報、必要に応じて消費生活センター(消費者ホットライン「188」)にご確認ください。
結論:デメリットは「都市ガス/LPガス」「持ち家/賃貸」「契約時期」の3分岐で特定できます
ガス会社切り替えのデメリットは全員に共通ではなく、契約形態と契約時期によって残るものと消えたものが分かれます。
まず、なぜ「契約時期」が効くのかを押さえてください。経済産業省 資源エネルギー庁が2024年4月2日に公布した液化石油ガス法施行規則の改正省令によると、①過大な営業行為の制限と消費者へのLPガス料金情報提供が2024年7月2日施行、②三部料金制の徹底(設備費用のLPガス料金への計上禁止)が2025年4月2日施行となりました(経済産業省 資源エネルギー庁「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令」2024年)。
つまり、「解約時の違約金=無償貸与された給湯器などの未償却残債」という最大のデメリットは、新しく結ぶ契約では構造的に成り立ちにくくなった一方、施行前に結んだ既存契約にはそのまま残っているわけです。ここが分かれ目です。
残っているデメリット特定チャート(4問・6終着点)
上から順に答えてください。終着点にあなたの「本当のデメリット」と次の一手が書いてあります。
Q1. 契約しているのは都市ガスですか、LPガス(プロパンガス)ですか?
→ 都市ガスの方は Q2-A へ/→ LPガスの方は Q2-B へ
(判別方法:ボンベが屋外に置いてあればLPガス、地面の導管から供給されていれば都市ガスです。検針票の事業者名でも確認できます)
---
Q2-A. 現在の料金メニューは規制料金(経過措置料金)ですか、自由料金ですか?
判定方法:検針票やWeb明細のプラン名を見ます。「一般料金」「一般ガス料金」など事業者名+一般と付くものは規制料金の可能性が高く、「◯◯プラン」「まとめ割」などの商品名が付いていれば自由料金です。不明な場合は現在の会社に電話で「これは経過措置料金ですか」と聞くのが確実です。
- 規制料金 → 終着A:違約金リスクはほぼゼロ。唯一の実質的デメリットは「原料費調整の上限がなくなること」
- 根拠と行動:規制料金には原料費調整額に上限がありますが、自由料金の多くには上限がありません。切り替え前に、新プランの約款で「原料費調整額の上限の有無」を確認してください。この1点だけで判断が変わります(後述の試算参照)。
- 自由料金 → 終着B:すでに規制料金の保護外なので、切り替えによる制度上のデメリットは実質なし。純粋な料金比較でOK
- 根拠と行動:申し込み先が正規の登録事業者かを、資源エネルギー庁「登録ガス小売事業者」一覧で確認してください(経済産業省 資源エネルギー庁, 2026年)。
---
Q2-B. 住まいは持ち家ですか、賃貸ですか?
- 賃貸 → 終着C:契約者はオーナー・管理会社であることが多く、入居者単独では切り替えできません
- 根拠:経済産業省の液化石油ガス流通ワーキンググループ中間とりまとめ(2024年)は、賃貸集合住宅ではその構造上、入居者はオーナーや不動産管理会社等が選定したLPガス事業者としか契約できないという制約があり、これが料金競争の働かない構造要因だと整理しています。
- ただし2024年7月2日以降、入居希望者へのLPガス料金情報の提供が制度化されました(事業者は要請への対応が義務、オーナー・管理会社・仲介会社を含む事前提示は努力義務)。次の行動:管理会社への依頼文テンプレ(後述)で料金内訳の開示を求める
- 持ち家 → Q3 へ
---
Q3. 現在のLPガス販売事業者との契約を結んだのは、2025年4月2日より前ですか、後ですか?
- 2025年4月2日より前 → 終着D:無償貸与設備の残債=違約金リスクが残っている可能性が高い
- 次の行動:14条書面の「設備の所有関係」「設置・変更・修繕・撤去に要する費用の負担方法」「契約解除時に配管を買い取る場合の金額または算定方法」の3欄を確認します(液化石油ガス法第14条/経済産業省 液化石油ガス流通WG 資料4「液石法第14条に基づく交付書面の具体例」2024年)。→ Q4 へ
- 2025年4月2日以降 → 終着E:三部料金制が適用され、設備費用のガス料金への計上は禁止。違約金リスクは小さい
- 根拠:経済産業省が2025年4月2日に公表した「LPガス料金の表示・計上方法に関する新しいルールの概要」により、設備費用をLPガス料金に計上することが禁止されました。次の行動:それでも念のため、契約書に最低利用期間・解約時精算の条項がないか確認してください。
---
Q4. 給湯器・コンロ・エアコン・Wi-Fi機器などを、ガス会社から「無償」で設置してもらいましたか?
- はい → 終着F:改正の適用外となる既存契約の可能性が高く、解約時に残債請求が想定されます。後述の回収月数シミュレータで、違約金を何か月で取り戻せるか計算してから判断してください
- いいえ → 終着D/Eの判定どおりで問題ありません
6つのデメリットを全部覚える必要はありません。上のチャートで自分の終着点を1つ決め、そこに書かれた「次の行動」を1つだけ実行するのが最短ルートです。
デメリットの全体像:6項目のうち、いま本当に効くのはどれか

よく挙がる6つのデメリットを、法改正後の現在地とあわせて整理します。
| デメリット | 主に該当する人 | 法改正後の現在地 | 回避策 |
|---|---|---|---|
| 解約金・設備残債の請求 | 2025年4月2日より前に契約した持ち家のLPガス利用者 | 新規契約では縮小(三部料金制の徹底で設備費の料金計上が禁止) | 14条書面で残債の算定方法を確認 |
| 原料費調整の上限がなくなる | 規制料金から自由料金へ移る都市ガス利用者 | 変わらず残る(むしろ原料高局面で重要度上昇) | 約款で上限の有無を確認 |
| そもそも切り替えられない | 賃貸のLPガス利用者 | 構造的に残る。ただし料金情報の開示ルールは前進 | 管理会社へ開示依頼 |
| セット割が外れて総額が上がる | 電気・通信とセット契約中の人 | 変わらず残る | 損益通算で判定(後述) |
| 思ったより安くならない | 使用量の少ない都市ガス世帯 | 変わらず残る | 自宅の使用量で年間試算 |
| 勧誘・値上げのトラブル | 訪問販売・電話勧誘の経験者 | 過大な営業行為の制限で一部規制強化 | 即決しない/188に相談 |
重要なのは、この6つが同時に降りかかる人はほぼいないという点です。切り替えそのものが危険なのではなく、自分に該当しないデメリットまで恐れて動けなくなることが、いちばん見えにくい損失といえます。
なお、都市ガスの切り替えはすでに特別な行動ではありません。資源エネルギー庁「エネルギー白書2025」によると、都市ガスの供給者変更(スイッチング)申込件数は2017年4月末の約15万件から2024年12月末には約618万件に増え、新規登録ガス小売事業者の都市ガス販売量シェアは20.7%に達しています。論点はすでに「切り替えるか否か」ではなく、「どの料金体系に移るか」に移っています。
3ケース対照表:工事・立ち会い・解約金・元に戻す費用の違い
「工事は必要か」「立ち会いは要るのか」は、都市ガス同士かLPガス同士か、LPガスから都市ガスかで答えが正反対になります。
| 確認項目 | 都市ガス → 別の都市ガス会社 | LPガス → 別のLPガス会社 | LPガス → 都市ガス(導管引込) |
|---|---|---|---|
| ①宅内工事 | 原則不要(メーター・導管はそのまま) | 原則不要(容器・調整器の付け替えのみ) | 必要(敷地内への導管引込+宅内配管、ガス機器の交換も要検討) |
| ②立ち会い | 原則不要。スマートメーター未設置でメーター交換が伴う場合のみ立ち会い | 原則必要。容器・メーター・調整器の交換作業に伴い在宅が求められる | 必須。引込工事日と開栓(点火確認)日の2回程度 |
| ③申込〜供給開始 | 次回以降の検針日基準。おおむね2週間〜1か月半 | 検針日・締め日基準。数週間程度 | 引込工事の日程調整を含み、月単位で見込む |
| ④解約金・違約金 | 原則なし(最低利用期間つきプランは例外) | 設備残債方式で数万円規模になり得る(2025年4月2日より前の契約) | 上記に加え、LPガス設備の精算が発生し得る |
| ⑤設備撤去費の負担者 | 発生しない | 契約書(14条書面)の「撤去に要する費用の負担方法」欄による | 同左。撤去費の負担者を事前に書面確認 |
| ⑥切り替えられない条件 | 導管エリア外/建物一括契約 | 賃貸で契約者がオーナー/集合住宅のバルク供給 | 導管未整備エリアは物理的に不可 |
| ⑦元に戻すときのコスト | 低い(再度の申込のみ) | 高い(再度の設備工事・精算、旧会社が同条件で戻すとは限らない) | 最も高い(引込設備が無駄になる可能性) |
| ⑧原料費調整の上限 | 規制料金=上限あり/自由料金=上限なしが多い | もともと自由料金(上限なし) | 移行先の料金メニュー次第 |
表の中で、上位の解説記事がほとんど触れないのが⑦元に戻すときのコストです。切り替えは「行き」の費用だけで語られがちですが、LPガスでは戻す際に再び設備工事と精算が発生し、しかも旧会社が以前と同じ単価で戻してくれる保証はありません。LPガスの切り替えは、都市ガスに比べて不可逆性が高い——この前提で慎重に検討することをおすすめします。
「工事不要だから気軽」と書かれているのは主に都市ガス同士の話です。LPガスは容器・メーター・調整器の交換があるため、原則として立ち会いの時間を確保してください。
数字で判断する:違約金の回収月数とセット割の損益通算
切り替えの是非は「違約金を何か月で取り戻せるか」と「電気代の増加分を引いても残るか」の2つの計算で判断できます。
使う4つの式
- 式1(違約金の目安) = 設備導入費 ÷ 契約月数 × 残存月数
- 式2(月間削減額) = (現行の従量単価 − 新しい従量単価) × 月間使用量 m³
- 式3(回収月数) = 違約金 ÷ 月間削減額
- 式4(真の削減額) = 月間削減額 − セット割解除による電気代の増加額
式1は、液化石油ガス法第14条に基づく交付書面(14条書面)に記載される算定方式の考え方に沿ったものです。たとえば設備導入費12万円・契約月数120か月で、36か月使った時点で解約する場合、残存月数は84か月なので 12万円 ÷ 120 × 84 = 84,000円 が目安になります。実際の金額は契約書の記載が優先されるため、必ず書面で確認してください。
自分の使用量帯を知る(全国平均との比較)
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター「LPガス一般用月次価格」(2026年7月31日時点)によると、LPガス(一般用)の全国平均価格は次のとおりです。
| 使用量の目安 | 想定世帯 | 全国平均額 |
|---|---|---|
| 5m³ | 単身世帯の目安 | 5,968円/月 |
| 10m³ | 2人世帯の目安 | 9,785円/月 |
| 20m³ | 4人世帯・冬季の目安 | 17,022円/月 |
| 50m³ | 大量使用の目安 | 37,197円/月 |
検針票の使用量と請求額を、この表と突き合わせてください。平均より明らかに高ければ、切り替えや値下げ交渉の余地が大きいと判断できます。
ただし地域差も大きく、同じ10m³でも北海道11,569円/東北10,698円/関東9,227円と開きがあります(同出典)。北海道と関東の差は2,342円・約25%です。自分の地域の水準を踏まえずに「全国平均より高いから損」と決めつけないでください。
回収月数の計算例
2人世帯(10m³)で、切り替えにより月1,200円下がると試算され、違約金が84,000円だったとします。
- 式3:84,000円 ÷ 1,200円 = 70か月(約5年10か月)
この場合、5年10か月住み続けてようやく元が取れる計算です。数年以内の引越し予定があるなら、切り替えない判断のほうが合理的といえます。
セット割の損益通算を忘れない
ガスだけ切り替えると電気とのセット割が外れ、電気代が上がることがあります。
- 例:ガス削減額1,200円/月、セット割解除による電気代増加600円/月
- 式4:1,200円 − 600円 = 真の削減額600円/月
- このとき回収月数は 84,000 ÷ 600 = 140か月に倍増します
「ガスは安くなったのに家計全体では損」という失敗は、この計算を飛ばすことで起こります。必ず電気とガスの合計額で比べてください。
上限のない自由料金に移るリスクを数字で見る
原料費調整の上限がない料金メニューに移る場合、原料価格の急騰がそのまま請求に乗る月が来ます。実際、2026年4月適用のサウジアラムコCP(LPガスの輸入契約価格)はプロパンが750ドル/トン(前月比+205ドル、約38%上昇)、ブタンが800ドル/トン(前月比+260ドル)と異例の急騰となりました(TOKAI産業用本部「2026年4月 サウジアラムコCPおよびMB価格発表のお知らせ」2026年4月2日発表)。2026年5月適用も750ドル/トンで高止まりしています(大阪ガス「プロパンガス価格・為替情報 2026年5月適用」)。
小売価格への転嫁は通常1〜2か月遅れで来るため、切り替え直後に値上がりして「切り替えたせいで高くなった」と誤認しやすい局面に入っています。切り替え前後の請求額を比べるときは、単価そのものではなく「原料費調整額を除いた基本料金・従量単価」で比較すると、切り替えの効果を切り分けられます。
ここに示した金額は、公表されている平均値と算定式に基づく試算例です。実際の削減額・違約金は契約内容、使用量、地域、時期によって大きく変わります。「必ず安くなる」と受け取らず、必ず自宅の検針票と契約書の数字で計算し直してください。
契約書のどこを見るか:14条書面チェックリスト7項目
LPガスの契約では、販売事業者に交付義務のある「14条書面」の7項目を見れば、自分に残るリスクの大半を確認できます。
液化石油ガス法第14条により、販売事業者はLPガスの種類・引渡方法・料金(料金制度の内容と算定の考え方)に加え、消費設備の所有関係、設置・変更・修繕・撤去に要する費用の負担方法、契約解除時に消費者が配管を買い取る場合の金額または算定方法を、書面に記載して交付する義務があります(経済産業省 液化石油ガス流通WG 資料4「液石法第14条に基づく交付書面の具体例」一般社団法人全国LPガス協会, 2024年)。
- □ ①料金制度の内容と算定の考え方 — 基本料金・従量料金・設備料金の三部に分かれて表示されているか
- □ ②設備の所有関係 — 配管・給湯器・コンロは自己所有か、事業者所有か
- □ ③設置・変更・修繕・撤去に要する費用の負担方法 — 解約時に誰がいくら負担するのか
- □ ④契約解除時の配管買取額(またはその算定方法) — 金額が空欄・不明瞭なら要確認
- □ ⑤契約期間と自動更新条項 — 最低利用期間の有無と更新月
- □ ⑥料金改定時の事前通知 — 変更の1か月前までに変更後料金と変更理由を通知する旨があるか(液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針)
- □ ⑦無償貸与の対象機器一覧 — エアコンやWi-Fi機器など、LPガス消費と無関係な設備が含まれていないか(2025年4月2日以降は計上禁止)
書面が手元にない場合:現在契約しているLPガス販売事業者に交付を求めてください。液石法第14条により交付義務があります。内容に疑義がある場合:消費者ホットライン「188」または都道府県のLPガス協会に相談する選択肢があります。
⑦は改正の効果を確認できる項目です。エアコンやWi-Fiなど、ガスと無関係な機器が無償貸与に含まれていた契約は、改正前に結ばれた可能性が高く、解約時の残債リスクも大きい傾向があります。
賃貸でLPガスが高いと感じたら:管理会社への依頼文テンプレ
賃貸では入居者が会社を選べない代わりに、2024年7月2日以降は料金情報の開示を求める制度的な足場ができています。
前述のとおり、賃貸集合住宅では契約者がオーナーや管理会社であることが多く、入居者の一存では切り替えられません。それでも、次の2段階なら入居者から動けます。
ステップ1:販売事業者に料金内訳の開示を求める
ご担当者さま
◯◯(住所・部屋番号)でLPガスを利用している◯◯と申します。
液化石油ガス法第14条に基づく書面(料金制度の内容と算定の考え方、消費設備の所有関係、撤去費用の負担方法を含むもの)の交付をお願いいたします。
あわせて、現在の基本料金・従量単価と、設備費用が料金に含まれているかどうかについてもご教示ください。
ステップ2:開示内容を持って管理会社に相談する
◯◯管理会社 ご担当者さま
◯◯号室に入居している◯◯です。
現在のLPガス料金について、販売事業者から交付された料金内訳を確認したところ、石油情報センターが公表する当地域の平均(10m³で◯◯円)と比べて月◯◯円程度高い水準でした。
2025年4月2日施行の三部料金制の徹底により、設備費用をLPガス料金に計上することは禁止されていると承知しております。現在の料金体系がこのルールに沿っているかご確認いただき、必要に応じて事業者へのご相談をお願いできますでしょうか。
これから引越す方は、内見時に「この物件のLPガス料金はいくらか」を確認項目に加えることをおすすめします。2024年7月2日施行のルールにより、事業者は料金情報提供の要請への対応が義務、オーナー・管理会社・仲介会社を含む事前提示は努力義務とされています(経済産業省 資源エネルギー庁 燃料流通政策室「LPガスの取引適正化に向けた制度改正の内容」2024年)。入居後の交渉より、入居前の確認のほうが圧倒的に低コストです。
日本LPガス協会(2025年)によると、LPガスは全国のほぼ半数にあたる約2,400万世帯で使用されています。都市ガスの導管が届かない地域では、切り替え先の選択肢はLPガス会社間に限られます。
トラブルを避ける:やってはいけない6つの対応
電話・訪問勧誘での即決、検針票情報の安易な提供、違約金を確認しない解約が、トラブルの典型パターンです。
- 勧誘でその場で契約する — 「今日中なら割引」と急かされても、社名とプラン名を控えて一度切り、公式サイトの料金表を確認してからで遅くありません。国民生活センターも「プロパンガス会社を変更するときは慎重に」(2024年)として注意喚起を行っており、訪問販売による契約はクーリング・オフできる場合があります。
- 検針票や供給地点特定番号を安易に伝える — これらの情報だけで切り替え手続きが進む場合があります。正規の登録事業者だと確認できるまで伝えないのが原則です。
- 違約金・最低利用期間を確認せずに解約する — 前述の回収月数の計算を先に済ませてください。更新月まで待つ選択肢も比較対象です。
- 従量単価だけで判断する — 基本料金・原料費調整・セット割まで含めた年間総額で比べなければ、正しい比較になりません。
- 口約束のまま契約する(特にLPガス) — 「ずっとこの単価です」という説明は、書面がなければ後から検証できません。料金表と値引き条件は書面かメールで受け取りましょう。
- 自分で先に現在の会社へ解約連絡をする(都市ガス) — 原則は新しい会社が解約を代行します。順番を誤ると切り替え日がずれる原因になります。
また、切り替え後にじわじわ単価が上がるという相談も従来から指摘されてきました。契約時の料金表を保管し、年に数回は検針票の単価と見比べてください。料金改定は変更の1か月前までに変更後料金と変更理由を通知することが取引適正化指針で示されているため、通知がないまま単価が上がっていたら、その点を事業者に確認する根拠になります。
不安をあおって即決を迫る、大幅な値引きを口頭だけで約束する——こうした勧誘は、それ自体が要注意サインです。迷ったら契約せず、消費者ホットライン「188」に相談してください。
切り替えの手順:確認から検針票の照合まで6ステップ
使用量の把握から切り替え後の検針票確認まで、次の6手順を踏めば大きな失敗はほぼ避けられます。
- 直近12か月の使用量と支払額を把握する — 冬と夏で使用量が2倍以上違う家庭も多いため、1か月分だけで判断しないでください。
- 現在の契約の解約条件を確認する — 都市ガスはプラン名と約款、LPガスは14条書面の該当7項目(前述)を確認します。
- 複数社で年間試算する — 比較サイトで候補を絞り、最終判断は各社公式の料金表で行います。冬と夏の両方を計算し、年間総額で比べます。
- 原料費調整の上限の有無を確認する — 省略されがちですが、高騰局面での支払額を左右する最重要項目です。
- セット割込みの世帯総額で比較する — 式4で真の削減額を出します。
- 切り替え後、最初の検針票を照合する — 契約時に提示された基本料金・従量単価と請求内容が一致しているかを確認します。
所要時間の目安は、比較・試算に1〜2時間、申し込みは10分程度です。実際の切り替えは次回以降の検針日を基準に行われるため、申し込みから完了まで2週間〜1か月半程度かかるのが一般的で、引越しシーズンはさらに時間がかかる場合があります。
申し込み先が正規の登録事業者かどうかは、資源エネルギー庁が公表する「登録ガス小売事業者」一覧で確認できます。同庁は、料金だけでなく保安への取組・契約期間・契約解除条件を確認することを推奨しています(経済産業省 資源エネルギー庁, 2026年)。
よくある質問
Q1. ガス会社の切り替えに立ち会いは必要ですか?
A. ケースで異なります。都市ガス同士の切り替えは原則不要で、メーターや導管はそのまま使われます。ただしスマートメーターが未設置でメーター交換を伴う場合は立ち会いを求められることがあります。LPガス同士の切り替えは、容器・メーター・調整器の交換作業があるため原則として立ち会いが必要です。LPガスから都市ガスへ移る場合は、導管の引込工事日と開栓日の2回程度、在宅が必要になります。
Q2. 切り替えの手続きは自分で何をすればいいですか?
A. 都市ガスの場合、新しいガス会社に申し込めば、現在の会社への解約手続きは原則として新会社が代行します。申込時には検針票の「供給地点特定番号」やお客さま番号が必要です。LPガスの場合は、新旧の販売事業者間で容器・設備の切り替え日程を調整するため、立ち会い日の確保と、旧事業者との精算内容の確認が必要になります。
Q3. 解約時に違約金はかかりますか?
A. 都市ガスは原則かかりません(最低利用期間つきプランは例外)。LPガスは、給湯器などの設備を無償貸与されていた場合、未償却の残債を請求されることがあります。ただし2025年4月2日施行の三部料金制の徹底により、新規契約では設備費用をLPガス料金に計上することが禁止されたため、契約を結んだ時期によって答えが変わります。まずは14条書面の「撤去に要する費用の負担方法」「配管買取額の算定方法」を確認してください。
Q4. 賃貸住宅でもガス会社を切り替えられますか?
A. 都市ガスなら入居者名義で切り替えられるのが一般的です。LPガスは建物単位の契約が多く、入居者単独での変更は原則できません。経済産業省の液化石油ガス流通WG中間とりまとめ(2024年)も、賃貸集合住宅では入居者がオーナー等の選定した事業者としか契約できない構造を指摘しています。まずは販売事業者に料金内訳の開示を求め、次に管理会社へ相談する順番が現実的です(依頼文テンプレは本文参照)。
Q5. どんなトラブルが報告されていますか?
A. 訪問販売・電話勧誘による意図しない契約切り替え、切り替え後にじわじわ単価が上がる「見せかけの値下げ」、旧事業者からの引き止めなどが挙げられます。国民生活センターは「プロパンガス会社を変更するときは慎重に」(2024年)として注意喚起しており、訪問販売による契約はクーリング・オフできる場合があります。相談先は消費者ホットライン「188」です。
Q6. 一度切り替えたあと、元のガス会社に戻せますか?
A. 制度上は戻せますが、コストが問題です。都市ガスは再度の申し込みで戻せる場合が多い一方、LPガスは容器・調整器の再交換や設備の精算が再び発生し、旧事業者が以前と同じ単価で契約してくれる保証もありません。切り替えは「戻すときのコスト」まで含めて検討してください。
Q7. 実際、どれくらい安くなりますか?
A. 一概には言えません。都市ガスでは割引率が数%程度にとどまることが多く、使用量の少ない世帯では年間数百円〜数千円という試算になる場合もあります。LPガスは地域差が大きく(10m³で北海道11,569円・関東9,227円/石油情報センター2026年7月31日時点)、平均より高い契約ほど見直し余地があります。ただし条件次第で逆に高くなるケースもあるため、必ず自宅の使用量と検針票の数字で試算してください。
---
まとめ:ガス会社切り替えのデメリットは、2024年7月2日・2025年4月2日施行の液化石油ガス法施行規則の改正で中身が入れ替わりました。いま自分に残っているデメリットは、①都市ガスかLPガスか、②持ち家か賃貸か、③契約が2025年4月2日より前か後か——この3分岐でほぼ特定できます。都市ガスなら「原料費調整の上限の有無」、LPガスの持ち家なら「14条書面の設備・撤去費用の欄」、賃貸なら「管理会社への料金内訳の開示依頼」が、それぞれの次の一手です。制度の詳細や最新の数値は、資源エネルギー庁・石油情報センターなど公的機関の公式サイトでご確認ください。勧誘トラブルや料金への疑義は、消費者ホットライン「188」に相談できます。
最終確認日: 2026年8月9日




